
― 上中里から、洋館の丘へ ―
5月のある朝。旧古河庭園で春薔薇を撮影しようと、上中里駅を降りた。
駅から庭園までの坂道を歩きながら、これほど都心に近い場所に、これだけ静かな空間があることを毎回不思議に思う。
🏰 洋館と薔薇の丘

旧古河庭園の顔は、小高い丘の上に建つ洋館だ。イギリス人建築家ジョサイア・コンドルの設計による石造りの建物が、薔薇の向こうに静かに佇んでいる。
5月の見頃を迎えたバラ園は、洋館を背景に赤・ピンク・白・黄と色彩が重なり合い、どこにカメラを向けても絵になる。カメラのシャッターを切る手が止まらない。




洋館の石壁の質感と薔薇の柔らかな花びらの対比、深い緑に浮かぶ鮮やかな色彩——ここにしかない構図がある。「洋館×薔薇」という組み合わせは一見シンプルなようで、光の角度や花の開き具合によって表情が刻々と変わり、撮り飽きることがない。
🌹 バラ園の構成と見どころ
バラ園は洋館の前面から斜面にかけて広がっており、上段・中段・下段と高低差のある構成になっている。上から見下ろせば色彩の絨毯、下から見上げれば洋館と花が重なる立体的な構図——どの高さに立つかで全く異なる景観が楽しめる。






訪れた5月上旬はまさに見頃。
赤系の大輪品種はボリューム感があり、ピンクの小輪品種は繊細でかわいらしく、黄色い品種は陽光を受けて鮮やかに輝いていた。一輪のクローズアップも美しいが、株全体と洋館を同時に収める引きの構図もぜひ試してほしい。
ただし、薔薇の種類と株数という点では、京成バラ園のような専門的なバラ園には及ばない。
旧古河庭園の魅力はむしろ「洋館・バラ・日本庭園という三つの要素が一枚の絵に収まること」にある。
🌲 日本庭園へ、もうひとつの顔
バラ園を堪能した後、坂を下ると日本庭園が広がる。小川治兵衛による回遊式庭園で、心字池を中心に石組みと植栽が丁寧に配されている。









洋館とバラ園の華やかさとは対照的な、深い静けさがここにはある。新緑が水面に映り込む様子、苔むした石の上に落ちる木漏れ日——気づけば随分長い時間、この景色の前に立っていた。
洋と和、華やかさと静けさ。この二つの顔を一度に楽しめることが、旧古河庭園の真骨頂だと思う。
🚶♂️ 旧古河庭園から、本郷通りへ
撮影を終えて庭園を後にし、本郷通りを六義園方面へ歩いた。道中、妙義坂のほとりでふと目が惹かれた地蔵尊に手を合わせ、六義園の新緑を堪能し、そのまま一日の散策が続いていった。
旧古河庭園はそれ単体でも十分に魅力的だが、本郷通り沿いの散策コースの一部として組み込むと、東京の歴史の重層性をより深く実感できる。春薔薇の季節に、ぜひ上中里から歩いてみてほしい。
入場料は一般150円。この充実度で150円は、東京都の庭園の中でも特に良心的な価格設定だと思う。
東京・神田で弁護士法人を経営する傍ら、日々の仕事で得る「理」とは対極にある「情」と「美」を求めてブログを立ち上げました。
このブログでは、法律という記録の仕事から離れた、一人の男の"余談"と"趣味の覚書"(食、旅、写真)を綴ります。

