― 化け地蔵の伝説、川音の癒やし、そして湯葉うどんの一杯 ―

🌿 SNSのリールが、足を動かした
きっかけは、SNSのリール動画だった。
苔むした石垣に沿って一列に並ぶ赤い帽子のお地蔵様、白波を立てて流れる清流、新緑の緑。画面越しでも伝わってくる静謐な空気に、「いつか必ず」と思っていた。
今回、西那須野に出向く機会があり、少し足を延ばして憾満ヶ淵(かんまんがふち)へ初訪問。ナビの案内のまま、含満児童公園の駐車場に到着した。


駐車台数は多くないが、この日は空いていた。そして、なんと無料。日光周辺の駐車場はほぼ有料という現実の中で、これは破格と言っていい。

この駐車場は、日光市が運行する赤い低速電動バス――グリーンスローモビリティの発着場所でもある。二荒山神社など観光の中心地へもアクセスできる。
たまたま発車したバスをパシャリ📸。帰りはこれに乗り込んで快適に戻ることができた。
🌿 山門をくぐれば、そこは別世界


駐車場から含満公園脇の参道を歩き、風情ある木造の山門をくぐる。
その瞬間、日常の喧騒がすっと遠のいた。
男体山から噴出した溶岩によって形成された奇岩怪石の間を、白波を立てて流れる大谷川。川のせせらぎが心地よく響き渡り、頭上には新緑の鮮やかな緑が広がる。深呼吸するだけで、体の芯からほぐれていく感覚がある。
承応3年(1654年)に晃海大僧正によって創建された慈雲寺のお堂、そして川を間近に見下ろす霊庇閣などが点在する。歩きながら自然と歴史を体感できる、贅沢な散策路だ。
🌿 並び地蔵(化け地蔵)――圧巻の石列と、不思議な伝説

川沿いにずらりと一列に並ぶ並び地蔵、別名「化け地蔵」。
苔むした石垣を背に、赤い帽子と前掛けをまとって静かに佇むお地蔵様たちを目にした瞬間、思わず足が止まった。圧巻、という言葉しか出てこない。

一体一体、表情が異なる。穏やかなもの、少し憂いを帯びたもの。眺めながら歩いていると、時の流れを忘れて歴史のロマンに引き込まれていく。

そして、このお地蔵様たちには不思議な伝説がある。行きと帰りで数を数えると、数が合わないというのだ。試してみたが、結果はここでは言わないでおく。ぜひ自分の足で確かめてほしい。
写真撮影するなら、小雨が降るシチュエーションがおすすめだ。この日は少し明るすぎたが、それでも仕上がりには十分満足できた。
苔と赤い帽子のコントラスト、しっとりと濡れた石垣――雨の日の化け地蔵は、また格別の表情を見せてくれるはずだ。
🌿 霊庇閣――370年の祈りが宿る場所



大谷川の激流をすぐ目の前に見下ろす場所に建つ、四阿造りの建物が霊庇閣だ。
承応3年(1654年)の慈雲寺創建の際、晃海大僧正によって建立された護摩壇で、かつては対岸の不動明王像に向かって天下泰平の祈りが捧げられていた聖地である。明治35年(1902年)の大洪水によって建物も不動明王像も流失したが、昭和46年(1971年)に輪王寺によって現在の姿に復元された。
370年以上の歴史を持つ祈りの場が、こうして現代に引き継がれていることに、静かな感慨を覚える。

眼下を流れる清流の迫力と、歴史ある建造物が織りなす景観は唯一無二だ。近年は海外のSNSでも広く注目を集めているようで、訪問時も国籍を問わず多くの方がその美しさに魅了されていた。
憾満ヶ淵散策では外せない見どころの一つである。
✅ 圧巻の並び地蔵・みずみずしい渓谷美と新緑の癒やし・日光屈指の静謐なパワースポット
🌿 お茶処 三天甘太郎――評価4.9の理由がわかった

散策を終えて時計を見ると13時30分。お腹がだいぶ減ってきた。
Googleマップで周辺を調べると、すぐ近くに口コミ評価4.9という驚異の数字のお店が出てきた。それがお茶処 三天甘太郎だ。実は店の前を少し通り過ぎていたのだが、慌てて戻った。
立ち寄ってみて、その評価に納得した。

テラスのカウンター席から眺める大谷川の流れが素晴らしい。川のせせらぎを聴きながらいただく湯葉うどんは、出汁の旨味と湯葉の食感が調和した、滋味深い一杯だった。抹茶ドリンクは500円で、小さめの氷が2個。薄まることなく、すっきりとした濃厚な味わいが楽しめる。コスパは十分だ。


湯葉が本当に美味しかったので、次回はぜひゆば重を頼みたい。この日は売り切れだったので、早めに訪問して注文することをおすすめする。
訪問当日は寡黙なご主人が一人で丁寧に作業されており、その静かで職人気質な佇まいもお店の心地よい雰囲気を引き立てていた。ロケーション・味・空間、すべてが揃った憩い処だ。憾満ヶ淵散策とセットで組み込むことを強くおすすめしたい。
🌿 大谷川沿いを歩いて、神橋へ

三天甘太郎を出て、大谷川沿いを歩いて神橋へ向かう。 散策中、川の中州に咲く花をパシャリ📸。
🌿 神橋――何度来ても、絵になる橋

神橋は、日光山内の入口に架かる二荒山神社の建造物だ。
天平神護2年(766年)、勝道上人が日光山を開く際、大谷川の急流に行く手を阻まれ神仏に加護を求めたところ、深沙大王が現れ2匹の蛇を放ち、その背から山菅が生えて橋になったという伝説を持つ。別名「山菅の蛇橋」と呼ばれる由縁だ。
現在の朱塗りの橋は寛永13年(1636年)の東照宮大造替時に整備され、明治35年の洪水で流失後、明治37年に再建。日本三大奇橋のひとつに数えられている。
憾満ヶ淵の並び地蔵で感じた歴史の深みが、この橋の伝説と繋がっていることを知ると、日光という土地の重層性がさらに際立つ。慈雲寺も霊庇閣も、そしてこの神橋も、いずれも同じ大谷川の流れと深く結びついている。


日光には何度も訪れているが、大谷川の澄んだ流れと相まって、この橋は何度見ても絵になる。
写真撮影を終えてほっと一息ついていると、外国の旅行者の方に、スマホで写真を撮ってほしいとジェスチャーで頼まれた。おそらく私が写真家に見えたのだろう(^▽^)。
喜んで、神橋を背景にパシャリ📸。日本の良い思い出の一つとなることを願う。
🌿 おわりに
憾満ヶ淵は、「映える」だけの場所ではなかった。
川音を聴き、緑を眺め、お地蔵様に見守られながら一歩一歩歩む時間は、日々の激務によってすり減ってしまいがちな現代人の心を、静かに、そして深く整えてくれる。
日光の美しい自然と、人々の祈りの歴史が今なお色濃く息づく聖域。SNSのリール動画が足を動かしてくれたことに、素直に感謝したい。
東京・神田で弁護士法人を経営する傍ら、日々の仕事で得る「理」とは対極にある「情」と「美」を求めてブログを立ち上げました。
このブログでは、法律という記録の仕事から離れた、一人の男の"余談"と"趣味の覚書"(食、旅、写真)を綴ります。


