― 揺れる橋、コバルトブルーの滝壺、そして熊よけの鈴 ―
揺れる橋の上で、新緑に洗われる

栃木県那須塩原市、塩原ダム湖畔に架かる回顧(かいこ)の吊り橋。
全長100m、高さ30m。数字で聞けば「なるほど」と思うが、実際に渡り始めると、その揺れが数字以上の存在感を主張してくる。



橋の入口に「吊り橋をゆらすのはやめましょう」と注意書きがある。
読んだ瞬間は苦笑いだったが、渡り始めて数歩で、その注意書きの重みに納得した。


駐車場は広く、トイレも完備。橋まで若干の下り坂があるものの、距離はたいしたことはない。家族連れでも気軽に散策できるレイアウトだ。



この日は新緑の盛り。光を浴びてきらめく緑のエネルギーと、可憐に咲く白い花々のコントラストが、視界を柔らかく満たしてくれる。眼下には渇水で水位が下がった塩原ダムの湖面が広がり、それでもカヤックを楽しむ人たちの姿があった。こういう余暇の使い方ができる人たちは、豊かだと思う。
マイナスイオンに満ちた空気の中で、橋の上に立っていると、日常の激務がふっと遠くなる。那須・塩原方面に立ち寄る機会があれば、ぜひ足を延ばしてほしいスポットだ。
知る人ぞ知る秘境へ ――おしらじの滝
本来の予定は「雄飛の滝」だった。
しかし雄飛駐車場を見落とし、道沿いの案内看板に従って車を停めたのが、おしらじの滝への入口だった。旅はしばしば、こうした「見落とし」が好転する。
駐車場で休憩中の先輩方に声をかけると、「1キロ・15分」と丁寧に教えてくれた。御年80歳とのこと。友人たちと一緒に山歩きを楽しめる年齢まで体を動かし続けていることに、静かな尊敬を感じた。



遊歩道はよく整備されており、木漏れ日が差し込む道を歩くだけで、清らかな空気に包まれる気がする。虫と鳥の大合唱。BGMは完全に大自然まかせだ。体感では5〜6分、距離にして300メートルほどで滝壺に到着した。

事前に「水は流れていない」と聞いていた。実際、この日も水の流れはなかった。雨が降ったときだけ滝の姿が現れるという、気まぐれな滝だ。それでも「見る価値はある」と太鼓判をもらっていたので、期待して下りていった。

その滝壺の青を、うまく言葉にできる自信がない。
コバルトブルー、という表現が一番近い。光の差し込む角度によって表情を変え、周囲の苔むした岩と鮮やかな新緑が水面にクリアに映り込む。
息をのむ、とはこういう瞬間のことを言うのだろう。



ただ、この日は大量の虫が渦を巻いており、幻想的な景色に若干のノイズが加わっていたことは正直に申し添えておく。



【アクセス情報・重要】南回りルートを強くおすすめします
西那須野方面からおしらじの滝・スッカン沢を目指す場合、南回りルートを選ぶことを強くおすすめする。
北回りルートは、ぐねぐね道が10キロほど続き、うち5キロは対向車との離合が困難なほど狭い。運転に自信があっても、神経を使う。南回りも長いワインディングロードが続くが、カーブの角度も浅く、道幅も若干広い。次回以降、私は南回り一択だ。
カーナビに任せると北回りを案内されることもあるので、事前に確認しておきたい。
山の駅たかはら ――滝めぐりの「拠点」にして、ひと息の場所

おしらじの滝から少し下ると、山の駅たかはらが現れた。
八方ヶ原・高原山散策の拠点として知られる施設で、近年は「おしらじの滝」「雄飛の滝」を巡る滝探訪のベースキャンプとしても広く活用されているとのこと。
滝めぐりを計画するなら、まずここに立ち寄ることをおすすめしたい。



令和5年にはキャンプ場「Star Light Camp Base」もオープンし、満天の星空が楽しめるサイトも選べるようになったと聞く。那須の夜空の下で過ごす時間は、それだけで十分な体験になりそうだ。
木造の落ち着いた建物の前に、昔懐かしい緑の公衆電話があった。山の中では携帯の電波が届かないこともある。万一の際にも、これがあれば安心だ。どこか心強く感じられた。

快晴の空の下、敷地を少し散策してから、おしらじソフトクリームをいただいた。あのコバルトブルーの滝壺を見事に再現した、鮮やかな青のソフトクリームだ。爽やかな味わいとともに、目でも楽しめる一品。滝壺を思い出しながら食べると、また格別だった。
そして、ここでひとつ重要な情報を得た。
雄飛の滝方面で、熊の出没情報があるという。施設では熊よけの鈴を貸し出してくれている。滝めぐりのコースは片道130分ほど。熊は怖い。おしらじの滝は十分に堪能した。
「君子危うきに近寄らず」――滝めぐりはここで潔く断念した。
✅ 滝めぐりの拠点として最適・ご当地グルメが充実・Wi-Fi・シャワー完備
⚠️ 周辺は熊の目撃情報あり。出発前に必ず情報確認を
おわりに
回顧の吊り橋の揺れ、おしらじの滝壺の青、山の駅のコバルトソフト。
那須・矢板の新緑ドライブは、予定通りにはいかなかったが、予定外の出会いがいくつもあった一日だった。
見落としが、新しい景色を連れてくることがある。
旅の面白さは、いつもそのあたりにある気がする。
東京・神田で弁護士法人を経営する傍ら、日々の仕事で得る「理」とは対極にある「情」と「美」を求めてブログを立ち上げました。
このブログでは、法律という記録の仕事から離れた、一人の男の"余談"と"趣味の覚書"(食、旅、写真)を綴ります。


