兄弟で過ごす、至福のペアリングナイト
2025年10月某日。
新橋の路地裏に灯る赤い文字「Hop Duvel」。
カウンター越しに立ちのぼる炭の香り、磨かれたグラス、静かな熱気。
今宵は、実兄と二人で“焼鳥×ベルギービール”のペアリングを堪能した。
🚪 序章:路地裏の白壁が、今夜のステージ

白壁に赤文字が映える店構え。
ここは新橋の名店「焼鳥ホップデュベル」。
一見するとシックなワインバーのような佇まいだが、一歩店に踏み入れば、炭火の香りがゆらめく。
「焼鳥とベルギービールのペアリング」という、唯一無二の世界がここにある。

🍺 1杯目:VEDETT(ヴェデット)で、口福のスイッチを入れる

淡い黄金色の液体がグラスの中で泡立ち、
照明を反射して輝くその姿に、思わず息をのむ。
乾杯の一杯は VEDETT(ヴェデット)。
オレンジピールを思わせる爽やかな香りと、軽やかでキレのある口当たり。
クセが強く個性的な銘柄も多いベルギービールの中で、このヴェデットは驚くほど親しみやすい 。
雑味がなく、まさに「はじまりの一杯」にふさわしい存在だ。
- スタイル:ピルスナー/ホワイト
- 醸造所:Duvel Moortgat(デュベル・モルトガット)
- ABV:約4.7%
🍞 レバーペーストとバゲット

濃厚なレバーペーストは塩の粒感がアクセントになり、
ヴェデットの爽快な酸味がそのコクを心地よく洗い流す。
🥒 前菜(かぼちゃ・レンコン・鶏肉の酢の物)

見た目も美しい前菜は、さっぱりとした酸味が効いており、
ヴェデットの軽快さと抜群に相性がいい。
この段階で、夜のペアリングの期待は確信へと変わった。
🍻 2杯目:妖精のビール「ラ・シュフ」と、珠玉の焼鳥たち

次なる一杯は、妖精マルセルの物語を秘めた「La Chouffe(ラ・シュフ)」。
ラベルに描かれた赤い帽子の妖精が、まるでグラスの中で踊るよう。
コリアンダーと熟したフルーツの香り、胡椒を思わせるスパイシーな余韻。
8%とは思えない飲みやすさがある。
- スタイル:ベルジャン・ストロング・ゴールデン・エール
- 醸造所:Brasserie d’Achouffe
- ABV:8.0%
❤️ ハツ 🦆 鴨肉の塊焼き 🥚 ちょうちん


ハツ。噛めば中から熱々の旨味があふれ出す。
燻製醤油とホースラディッシュの組み合わせが絶妙。
凝縮された旨味が詰まった鴨肉。
脂の甘みと火入れの妙が際立ち、ラ・シュフのモルトの甘さとスパイスが完璧に調和する。
黄身を包む薄皮が「ぷちゅん」と弾け、濃厚な卵のコクが口いっぱいに広がる。
ラ・シュフのスパイシーさが後味を引き締め、妖精の魔法のような余韻を残す。
🍷 3杯目:公女に捧ぐ「ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ」

三杯目は、美しき公女マリー・ド・ブルゴーニュに捧げられた
「Duchesse de Bourgogne(ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ)」。
深紅の液体は、まるでワインのよう。
チェリーやカシス、オーク樽の香りが重なり、
甘酸っぱい芳香がグラスを満たす。
18ヶ月熟成の古酒と若酒のブレンドが生む、重層的な味わいだ。
- スタイル:フランダース・レッド・エール
- 醸造所:Brouwerij Verhaeghe
- ABV:6.2%
🍗 かしわもも 🌰 ぎんなん


力強い弾力とジューシーな脂の旨味。
「ドゥシャス」の酸と果実味がこれを包み込み、ワインにも似た余韻を引き出す。
秋の香り漂うぎんなん串。
ほろ苦さと赤果実の甘酸っぱさが重なり、
まるで晩秋の森を思わせる味わいに。
🧪 4杯目:駅馬車が生んだ発明「パウエル・クワック」

次なる一杯は、独特の“フラスコ型グラス”で知られる
Pauwel Kwak(パウエル・クワック)。
ナポレオン時代、宿屋の主人が馬車の御者のために考案したと伝わる逸話がある。
香ばしいカラメルとトフィーの香り、ふくよかな甘みが特徴的。
- スタイル:ベルジャン・ストロング・アンバー
- 醸造所:Bosteels Brewery
- ABV:8.4%
🧀 チーズ焼き 🍢 つくね


香ばしく焼かれたチーズの塩気と旨味。
そこにクワックのカラメルのような甘さが重なり、
“甘じょっぱい”幸福なペアリングを生む。
この瞬間、時間の流れがゆるやかに止まる。
つくねも、ふっくらと焼かれ、軟骨のコリコリとした食感が楽しい。
🕯️ 5杯目:祈りの一杯「シメイ・ブルー」で締めくくる夜

ラストを飾るのは、修道院で造られるトラピストの名品
Chimay Blue(シメイ・ブルー)。
厳格な戒律のもと、修道士が祈りと共に醸す一本。
黒みがかった琥珀色、熟成プルーンのような芳醇な香り。
まるで「液体の祈り」とでも呼ぶべき荘厳な味わいだ。
- スタイル:ベルジャン・ストロング・ダーク・エール
- 醸造所:Scourmont Abbey
- ABV:9.0%
🍳 親子丼

とろりと仕上げた卵と、旨味の強い甲斐路軍鶏。
甘辛い割り下とご飯が一体となり、
シメイ・ブルーの複雑な甘みが見事に寄り添う。
もはや“ビール”という枠を超えた、神聖なフィナーレだ。
🌌 なぜ惹かれるのか:「ホップデュベル」という体験
この店が特別なのは、料理とビールの味わいだけではない。
空間、素材、そして店主の哲学そのものが、体験を形づくっている。
🎷 空間
新橋の路地裏にひっそりと佇むカウンターだけの店。
心地よいジャズが流れ、時間がゆっくりと進む。
🐔 素材
主役は山梨県・中村農場の「甲斐路軍鶏」。
毎朝丸ごと仕入れ、店主が自ら捌く。
この徹底が、串一本一本の鮮度と香りに宿る。
🔥 技
店主は名店「バードランド」出身。
火入れの加減、串の組み方、余熱の使い方。
すべてに職人の矜持が宿る。
✨ 結び:兄弟で過ごした、忘れられない夜
あの夜、「ホップデュベル」で過ごした時間は、
単なる“食事”ではなく、“物語”だった。
一杯のビールに宿る伝統と、
一本の串に込められた技が出会う場所。
その交わりを、兄弟で静かに味わう。
心に残るのは、幸福と余韻。
そして、またいつかこの路地を訪れたくなる予感だ。
🍺 焼鳥とベルギービールのあわいに、人生の旨味がある。
東京・神田で弁護士法人を経営する傍ら、日々の仕事で得る「理」とは対極にある「情」と「美」を求めてブログを立ち上げました。
このブログでは、法律という記録の仕事から離れた、一人の男の"余談"と"趣味の覚書"(食、旅、写真)を綴ります。


