
🏮 武蔵小山で発見した「大人の静謐な空間」
東急目黒線武蔵小山駅西口。都立小山台高校のグラウンドを横目に進む細い路地。
そこに「手打蕎麦 ちりん」はひっそりと佇んでいます。
一階はカウンター席のみ、二階にテーブル席という構造は、一人客から少人数の語らいまで、幅広い需要に応える合理的な空間設計です。
桜の季節に二階から校舎の桜が見えるという「日常の余白」が用意されているのも、この店の魅力でしょう。
この店は「手打蕎麦」を標榜しているだけあり、蕎麦の品質は疑う余地もありません。
しかし、ちりんの真価は、その「日本酒を呼ぶつまみの構造的完成度」にあります。どの料理も家庭的でありながら、家庭では再現できない技術が光り、日本酒が自然と進みます。
🐟 豊洲直送の刺身――誠実な仕入れの証

まず注文するのは、店の品質管理が問われる魚系、刺し盛りです。
店主が豊洲市場から直接仕入れてくるという魚は、すべてが美味。
秋刀魚(サンマ)の刺身のように、旬の素材を即座にメニューに反映させる「柔軟性」も、この店の評価を高めます。
🍳 だし巻き卵――理屈を超えたやさしさ

次に、温かいもので技術力を検証します。
お蕎麦屋さんのだし巻き卵です。
これは、出汁の分量、火の入れ方、そして蕎麦屋の命である出汁の品質が問われる、単純ながらも技術を要する一品です。
ちりんのそれは、出汁がよく効いていて、ふわふわ。掛け値なしに美味しい。
普通の出汁巻き卵の他に、青唐の入った「リスクのある選択肢」(青唐の出汁巻き卵)があるのも面白い。
ピリッとした刺激は、酒飲みにはたまらないアクセントですが、まずは基本となる通常の出汁巻き卵で、店の技術の高さを確認してもらいたいです。
🥔 牛すじとじゃがいもの煮込み――庶民の中の論理美

おすすめメニューの中から選んだ牛すじとじゃがいもの煮込み。
麺つゆに溶けた脂の甘みが、じんわりと広がり、自然と笑みがこぼれます。
こういう料理には、無駄が一切ありません。
素材の組み合わせ、火加減、盛りつけ。
すべてに「理由」が。合理と感性が共存しています。
それは、弁護士が訴訟の理論を組み立てるときと同じ。
すべてに理由があり、だから説得力が生まれるのです。
🍶 まぐろとわけぎのぬた――再会のような味

ちりんに来たら必ず頼む一品があります。
それが、まぐろとわけぎのぬた。
まぐろに酢味噌をからめて口に運ぶと、酸味と旨味がゆるやかに溶けていく。
この“まろやかさ”は、日本酒に寄り添うために生まれた味。
一度出会えば、また頼まずにはいられない。
人生でも、こういう関係が理想。一度信頼した人と、何度でも関われる関係。
ちりんのぬたは、そんな再会の味がします。
🦑 イカ焼きと鴨焼き――沈黙を楽しむ料理

酒の肴として出てきたのは、肝ごと干したイカ焼き。
あぶった香ばしさが鼻をくすぐります。
ちびちびと摘みながら、黙って日本酒を飲む時間。
この沈黙が、最高の贅沢です。

続いて鴨焼き。
外は香ばしく、中はしっとり。
噛むほどに旨味が広がります。
鴨という食材は、相手(葱)と組んでこそ光る存在というのが面白い。
弁護士の仕事も同じで、一人ではなく、依頼者というパートナーと共に成果をつくるのです。
🐓 鶏焼きと締めの天せいろ――「和(わ)」を生む力

外はパリッと、中はジューシー。
スダチをかけて、さっぱりと。
さらに、酒が進んでしまいます。

十分につまみを堪能し、お腹も膨れてきました。そろそろ締めの時間です。
締めの蕎麦は「せいろ」のみで良い。これは理性の声です。
しかし、この店は天ぷらも美味しい上、天せいろが非常な「リーズナブルな対価」で提供されます。
「品質の高さ」と「コストパフォーマンス」が導く結論は、理性的な判断を一時停止させます。
これがデブになる原因だと分かってはいますが、合理的な逸脱として天せいろを頼んでしまう。
蕎麦は、やはり店で食べるのが一番です。
家で茹でる持ち帰り蕎麦とは、麺のコシ、風味、そして店主の技術によって引き出される「本質的な価値」が異なります。
同席してくれた皆が「美味しい」と笑顔になったのを見届け、私は静かに蕎麦をすすります。美味しいものは、法廷での緊張を解き、皆の間に「和(わ)」を生む力がある。それを再認識させてくれる、このちりんは、大人が通うべき名店です。
店主はこちらの方
店主の石川雅規さん
実は、義兄だったりします(*^-^*)
家族に内緒で、深大寺の蕎麦屋で修行をして、ちりんを開店させるという豪の者。
しかし、その経営の才覚は確かなもので、武蔵小山ちりんとともに、学芸大学の学大角打、五反田のまほろばと三店舗を経営しています。
ちりん以外の二店舗は、さらに居酒屋色が強いですが、本格的な手打蕎麦が食べれるところはかわりません。
どこもおすすめですよ。
石川雅規
株式会社Bプラス代表取締役
モットーは”新しい感覚の町の蕎麦屋”
2007年に「手打蕎麦ちりん」を武蔵小山に開店して以来、”新しい感覚の町の蕎麦屋”をモットーにその歩みを進めています。
おいしい手打ち蕎麦とお酒、気の利いたつまみを、遅めの時間までカジュアルに楽しむ…..そんなお店があったらいいな…..が私達の出発点です。
江戸時代の蕎麦屋は居酒屋の役割を担っていたそうです。
時代の流れで姿を消しつつある街場のお蕎麦屋さんを今の感性で形にしています。
創業者自身30歳で他業種から飲食界に転職、業界の常識に縛られない柔軟な店作りを実践してきました。
現在3店舗ですが、変わり蕎麦専門店などまだまだ実現したいアイデアがたくさんあります。

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東京・神田で弁護士法人を経営する傍ら、日々の仕事で得る「理」とは対極にある「情」と「美」を求めてブログを立ち上げました。
このブログでは、法律という記録の仕事から離れた、一人の男の"余談"と"趣味の覚書"(食、旅、写真)を綴ります。


