外濠をあとにして、少しだけ歩く。

🎨 外濠に沿って ― 母校と桜と、都市の時間 ―

3月29日。春の季節は変わりやすい。日曜日、貴重な快晴。そして、桜は見ごろを迎えている。 このチャンスは、生かすほかない。 まだ少しだけ冷たい空気の中、足を運んだのは市ヶ谷の外濠。市ヶ谷駅を降りて、外濠公園を歩き、飯田橋 […]


靖国神社を越え、到着したのは千鳥ヶ淵。

流石に、都内屈指の桜スポット。 日曜日の快晴であることもあり、大混雑だ。
ただ、誰も険しい顔をしている人はいない。 お堀の斜面から水面へとせり出す圧倒的な桜の姿が、みなの心を優しく解きほぐしているのだろう。

ボートがゆっくりと水面を進む。
その周りを、桜が包み込むように広がっている。
空と水と桜。
そして、その中に溶け込む人の気配。

桜は、ここでは主役でありながら、水辺の風景の中に、自然と、そして雄大に溶け込んでいる。
人の多さは、確かにある。
けれど、それは喧騒ではない。それぞれが、それぞれの春を楽しんでいるだけだ。

🌿 北の丸公園 ― 「留まる春」の気配

千鳥ヶ淵の賑わいを抜け、北の丸公園へ。
一歩足を踏み入れると、空気がすっと静まる。

園内に入り、ひと際目を引くのが、上品で鮮やか、それでいて可愛らしい桜。
シダレザクラ(枝垂桜)の一種、その中でも少しピンク色が濃いベニシダレ(紅枝垂)であろうか。
レンズ越しに覗くその可憐な姿は、この桜の写真だけでも十分に満足度が高い。

✨ 境界が消える瞬間 ― 完璧な水鏡

広い園内では、たくさんの花見客がシートを広げて寛いでいる。
桜の密集度は千鳥ヶ淵ほどではないが、その分、空間にたっぷりと余裕がある。
ここはゆっくりと花見をするには、かなりの穴場なのではなかろうか。

水辺に立つ一本の桜。
枝を大きく広げながら、静かに、この空間を支えている。
その姿が、そのまま水面に映る。 風が止まると、上下の境界が消えて、現実と反射が、ひとつの景色になった。

🌺 椿という、もうひとつの主役

桜の淡い色彩の中を歩いていると、道端に何気なく咲いていた椿に、はっと目を引かれた。 ちょうど見ごろ。
疵一つない、完璧な花弁。
春の光を浴びて、自ら輝きを放っているようにも見える。美しい。

北の丸の桜や花々は、ただそこにあって、見た人の心の中に、静かに残る。

外濠が「動きのある春」だとすれば、ここは、「留まる春」。
水があることで、時間がゆっくりになる。 音は遠く、風はやわらかく、視線も、自然と長く留まる。

気づけば、何もしていない時間が、少しだけ増えている。
「何もしない時間」を、ちゃんと受け止めてくれる場所があるということ。
それが、この北の丸公園のいちばんの魅力なのかもしれない。

もう少しだけ、この静けさに浸ったあと、足はさらに奥へと向かう。 石と緑に包まれた、もうひとつの春へ。

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